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地中構造物の耐震解析法の解説(応答震度法を中心にして)

1.地中構造物の基本的な考え方

地中構造物の地震時の振動特性は既往の研究から下記の2点が明らかになっています。
・地中構造物の見かけの重量は、周辺地盤と比較して小さいため構造物自身で振動すること
 なく、周辺地盤と同様に振動する。
・構造物の変形は、地震が地盤に覆われているため、構造物の振動によるエネルギーは周辺
 地盤に吸収されてしまい、結果として地震時に生じる周辺地盤の変形に追従して挙動する。

地中構造物の振動特性は橋梁などの地上構造物の振動特性と大きく異なっているため、そのような振動特性に対応した耐震設計法を実施する必要があります。

地中構造物(横断方向)を対象とした耐震設計法としては一般的な手法として、
 ①地震時土圧による照査法(震度法)
 ②地盤の変形を考慮した照査法(応答変位法、応答震度法(FEM系静的解析手法))
 ③動的解析手法
があります。ここでは特に、応答変位法、応答震度法について説明します。

2.応答変位法の概要

左図は、地盤・構造物全体系に地震動が働いた場合の地中構造物の挙動を示したものです。破線で囲まれているものが構造物の元の形状を表し、地震によって実線のように変形することを表しています。

応答変位法の基本的な原理は、図の全体系から地中構造物のみを抜き出して、地中構造物の地震時挙動が実線のように変形することを再現する方法です。したがって、応答変位法を正確に行うためには、構造物周辺での変形と力の状態が全体系と等価になるように地震時荷重を設定する必要があります。

右図は、フレーム法による応答変位法のモデル図です。
地中構造物を梁要素でモデル化し、周辺に地盤と構造物からなる相互バネを配置します。
荷重には、地盤の地震応答解析等から計算される自然地盤における変位と地盤内に発生する応力、さらに、構造物自身の重量による慣性力を作用させます。

地中構造物横断面の地震時挙動   フレーム法による応答変位法のモデル図

ここでは、複雑な地震力の作用メカニズムを明らかにするために、次のような簡単なモデルを用いて説明します。
下図のように地中構造物の硬さと重さが周辺地盤と同じモデルを想定します。
地中構造物は、地盤の点線で囲まれた塊と同じになります。この場合、接触面では、地盤内応力としてせん断応力のみが作用することになり、力学的な釣合いが保たれます。
このような場合、側面に直角方向に作用する地震時土圧などは生じず、地盤と構造物の剛性の違いによる相互作用力も発生しません。
つまり、構造物だけを取出して解析する場合は、この地盤内応力による地震荷重(周面せん断力)のみを考慮すればよいことが分かります。

自然地盤の地震時挙動

しかし、一般に地中構造物と周辺地盤の剛性は異なっています。ここでは、その場合の地震荷重の設定方法について考えてみます。

下図は、地盤内の応力のみが働いた場合の構造物の変形を表しています。地中構造物と周辺地盤の剛性が異なる場合、実際には実線で表される構造物の変位と点線で表される自然地盤の変位との間に食違いが生じます。この変位差によって構造物の側面に周辺地盤からの押し引きの力が働きますが、その押し引きの力の方向は地盤と構造物の剛性差によって異なります。これが地盤と構造物の剛性差に基づく動的相互作用力に相当します。

したがって、耐震計算では構造物のフレームモデルの周辺に地盤バネを設け、自然地盤の応答変位をバネ端から入力してこのような相互作用力を評価します。

構造物変形

ここで説明した応答変位法は、その力学モデルの基本要素である地盤バネの設定方法が指針・基準ごとで異なるなど一貫性がありません。

これに代わる耐震計算法として提案されたのがFEMを用いた静的解析法です。この解析法では、応答変位法において設定方法が曖昧になっている地盤バネを使うことを避けるために、地盤~構造物の全体系をFEMでモデル化し、地震荷重や境界条件の設定法を変えることによりいくつかの解析法が提案されています。

次の章では静的解析法の一つである応答震度法について説明します。

3.応答震度法の概要

応答震度法は、2次元FEMを用いた応答変位法として最初に提案された耐震設計法です。加速度分布を静的に作用させ、構造物および周辺地盤を地震時の状態と同様にせん断変形させることにより、構造物の変形や発生断面力などを算出する方法です。
 ・地震荷重の評価方法が容易で相互作用バネの設定がいらない
 ・免震開削トンネル構造など特殊なモデルにも適用可能
といった長所があるため、近年の地中トンネルの耐震解析の主流となってます。一方で、
 ・モデル作成に時間と労力がかかる
 ・地盤の非線形特性を考慮できる反面、計算時間がかかる
 ・地中構造物の非線形性を追従するためには要素分割を細かくしなければならない
などの課題もあります。

構造物変形

下の表は応答変位法と応答震度法の長所と短所です。目的に応じて使い分けが必要です。

長所と短所

4.地中構造物の応答震度法による耐震解析の計算プロセスについて

地中構造物の耐震設計のニーズは近年増加してきており、

・トンネル標準示方書[開削工法編] (応答変位法)
・阪神高速道路基準 (応答震度法)
・首都高高速道路基準 (応答変位法)
・NEXCO設計要領基準 (応答震度法)
・道路プレキャストコンクリート工耐震設計要領
 [カルバート編]
(応答変位法、応答震度法)
等、基準やガイドラインでの適用が進められています。

応答震度法をはじめとする耐震設計では、地盤の地震応答解析~構造物の常時解析~構造物の地震時解析と複数の計算を一貫性を保ったモデルで進めていく必要があります。計算間で地盤の動的特性や地盤応答結果を構造物モデルに適切に連携させなくてはなりません。

これら一連の計算プロセスを、複数の汎用ソフトを用いて計算するのがこれまでの一般的でした。解析手法の難しさやプロセスが煩雑であることから、専門性の高い解析方法であるといえます。

計算プロセス

5.耐震設計関連の製品、サービスのご紹介

弊社では長年耐震解析支援に取り組み、ニーズに沿った製品、サービスを提供しています。

製品の特長として、
 ・設計プロセスの統合化(モデル化から解析処理まで自動で連携)
 ・モデル作成支援(形状のパターン入力、FEM自動メッシュ作成)
 ・非線形特性値、地盤バネ、地震時荷重等、解析に付随する計算も自動算定
等があります。

これまで複数の汎用ソフトの組み合わせが必要で煩雑だった計算プロセスを、一つのシステムに統合することで、より強力に耐震設計業務を支援します。

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